このテンペストの有名な台詞に最初に出会ったのは、学校か何かの新聞広告だった。”We are such stuff as dreams are made on.” そこでの「夢」の解釈は、あなたを形作るのは夢なんだよ!この学び舎であなたの夢を見つけよう! といったずいぶんとキラキラとしたポジティブなものだった。シェイクスピアもそんな某専門学校の歌みたいなセリフを書くんだな、と最初から違和感はあったものの、ずいぶん経ってからDVDのチェックを兼ねてテンペストを見て、ほぼ真逆のことを言っていると分かった。(最初の違和感は正しかったと少し喜んだのを覚えている) 大魔術師のプロスペローが義理の息子になる若者に言ったのは、自分が見せた幻影と同じく、「人間もその成し遂げたことどもも儚い夢のようなものだぞ」という、夢を覚ます方向・クールダウンを促す言葉で、「若者の夢を応援」的な夢ではなかった。こうした「人生は夢のように儚い、無常である」といった観念は東洋や仏教の専売特許のように思っていたが、シェイクスピアの中にもしっかりとあって、当時の観客たちも十分理解したということだろう。西洋とかキリスト教とか、時代とかのステレオタイプで考えない方がよいと思わされる。
せっかくなのでシェイクスピア大全をあたってみた。
We are such stuff as dreams are made on, and our little life is rounded with a sleep.
- 福田恆存:吾らは夢と同じ糸で織られているのだ。ささやかな一生は眠りによってその輪を閉じる
- 小田島雄志:われわれ人間は夢と同じもので織りなされている。はかない一生の仕上げをするのは眠りなのだ
- 松岡和子:我々は夢と同じ糸で織り上げられている。ささやかな一生をしめくくるのは眠りなのだ


